火葬・骨上(こつあ)げ、中国では・・・

中国の骨壺写真



ご存知の方もあるでしょうが、写真は「骨灰盒(グゥフイホー)」と言って中国の骨壺です。これは木製のもっとも標準的なデザインのものですが、他にも陶磁製のものや翡翠で造られた高級品もあるようです。いずれも日本のような筒型の壷とは違い、むしろ箱のようです。

先日観た中国・香港合作の映画でも、この「骨灰盒」を目にしました。東北部の地方都市を舞台にした現代劇のミステリー映画でしたが、火葬後の拾骨シーンがあり、骨壺もさることながら、日本とは大分違う様子を興味深く見ました。

日本の火葬・骨上げでは、遺族・参列者は柩を炉に入れたあと火葬が終わるまで待って、全員で焼骨を箸渡しで拾骨し、喪主の抱く骨壺に納めます。いっぽう中国では、火葬から拾骨まで遺族近親者が立ち会ったりその場で控えている必要はなく、火葬場の職員が行うそうです。遺族は当日か翌日に連絡を受け、それから遺骨を受け取り、「骨灰盒」に納めるのです。

映画でも、火葬場の職員が大きめのトレーかバットのようなものにお骨を載せて来て、遺族に引き渡す様子が描かれていました。手間要らずで合理的な仕組みのようにも思えますが、日本流の骨上げに馴染んでいる感覚からすると、何かオートメーション処理のようで、哀悼の情緒に欠ける感じがしないでもありません。

合理的と言えば、この中国式の骨壺「骨灰盒」には写真でもわかるように、前面部の真ん中に円型(角型の場合もあります。)の窪みがあります。故人の遺影写真を入れるための細工で、初めて見たときに「これはとてもよいな」と思いました。

遺影を入れた中国の骨壺

日本の骨壺では、特注のものを除いてこのような遺影や名(俗名、戒名を問わず)が入れられるようになっているものはありません。ですから、額に入れた遺影を別に用意し遺骨と対にするのが通例となっているのかも知れませんが、骨壺の外面に遺影を付けるようになっていたら、故人への哀惜の情もより深まり、網棚やコインロッカーに遺骨を置き去りにするような事例も減るのではないでしょうか。

ところで、仏式の葬儀が多い日本では遺骨は四十九日までは遺族の手元に置き、それ以後にお墓に埋葬するというのが一般的ですが、中国では火葬場に納骨施設が併設されていて、そこに預けることが多いようです。この納骨施設ですが、扉のないロッカー式の棚で「骨灰盒」がぴたりと納まるようになっています。すると納骨棚には遺影を入れた前面部が並ぶことになり、誰の遺骨かも視覚的に分かるわけで、この点もまた合理的と言えます。

ただし、ここに納骨できるのは3年が限度で、遺族はそれまでにお墓を入手しなければなりません。期限を過ぎて引き取られない遺骨は例外なく合葬されるとのことですが、経済成長著しい沿海都市部では人口増のために墓不足も深刻で、当然価格も高いため、期限内にお墓が用意できない遺族も多いようです。
最近は日本でも、様々な事情から手許に遺骨を置いている方が増えているようですが、この中国式の「骨灰盒」であったら装飾性もありますから、家の中に置かれていてもインテリアのようで違和感がないかも知れません。実際、以前ニューヨーク在住の台湾人の方のお宅に招かれたときに、リビングルームに置かれているのを以前見たことがあります。家族のポートレートや装飾工芸品などのインテリアに違和感なく溶け込んでいました。
もっとも、このとき盒の中にお骨が入っていたかどうかはわかりませんが・・・。