日本では葬儀の9割以上が仏教式(仏式)で行われています。また、それら仏式で行われる葬儀の流れ・手順は、おおむね一定です(一般的な葬儀の手順)。
しかし、仏式の葬儀に何度か参列した経験のある人は、宗旨宗派によって僧侶の読経や、儀礼・作法、祭壇飾りや席の配置などに違いがあることに気づかれたのではないでしょうか
日本の仏教には多くの宗旨宗派があります。それぞれの宗旨宗派は釈尊(ブッダ、お釈迦様)のことば(教え)に始まる仏教という宗教であることに変わりはありませんが、教えの解釈である教義や最重要とする経典などの違いによって多様な宗旨が開かれ、さらにそれぞれの宗旨から主として寺を単位に多くの宗派に別れました。ただし、それらの宗旨宗派はいずれも教団という性質のものではないため、「宗門」と言われることもあります。
伝統的な仏教の宗旨としては、次の十三宗が知られています。
さらに、天台宗、真言宗、日蓮宗、浄土宗、浄土真宗、臨済宗にはそれぞれ2つ以上の宗派があり、それらを合わせて「十三宗五十六派」と言われることもあります。
仏式の葬儀で多くの人が誤解していることのひとつに、合掌礼拝(がっしょうらいはい)があります。
仏式葬儀は仏壇・祭壇に向かって合掌礼拝することから始まり、読経、ご焼香の後、再び合掌礼拝して終わりますが、このとき葬儀の出席者は誰に向かって合掌し礼拝しているのでしょう? おそらくほとんどの方が、亡くなられた方に向かって合掌し、頭(こうべ)を下げているのではないでしょうか。
仏教では、合掌礼拝は仏前における基本の作法です。つまり、仏様の前で、仏様に向けて行われるのが合掌礼拝です。これは葬儀でも同じで、合掌礼拝は故人に向けて行うのではないのです。
日本の仏教は大乗仏教(だいじょうぶっきょう)という古代インドの改革派仏教の流れを受け継いでいます。大乗仏教では釈尊(お釈迦様)以外にも多くの仏様がいます。
阿弥陀(あみだ)様といわれる阿弥陀如来に代表される「如来(にょらい)」、観音(かんのん)様とよばれる観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)で知られている「菩薩(ぼさつ)」、さらに、不動明王に代表される「明王(みょうおう)」、そして仏教・仏法を守護するとされる「天部(てんぶ)」には梵天、帝釈天、毘沙門天など・・・がそうした仏様です。
このことから、日本の仏教の宗旨宗派には、それぞれに最高位として信仰する仏様があり、また各寺には「守り本尊」とする仏様がいるのです。
そして、仏教式の葬儀は、それぞれの宗旨宗派で信仰される仏様、さらに各寺の仏様に、故人の極楽往生と仏弟子としての導きをお願いする儀式として執り行われます。僧侶が読誦するお経も、阿弥陀如来を信仰する宗旨宗派なら「阿弥陀経」、観世音菩薩なら「観音経」というように、お願いする仏様によって異なりますが、合掌礼拝も読経も焼香も、すべてそれぞれの仏様にお願いする行為です。
ですから、遺族・親族はじめ葬儀に参列する人たちが、それぞれ仏様の前に進み、故人の導きと冥福をお願いするというのが仏教式の葬儀の精神であり、基本形です。
宗旨宗派の教義によって、誓願する仏様や読誦するお経、葬送儀礼の手順・儀礼作法が意味することも違ってきます。詳しくは、菩提寺の住職や宗派の本山などに聞かれるとよいでしょう。
仏式葬儀に対しては「意味のわからないお経を上げるだけで有り難くもない」「お布施など費用がかかって坊主丸儲けだ」といった批判や不満を口にする人もいますが、宗旨宗派の教義や葬儀の意味を知れば、お布施の額はさておき、実際の葬儀に際して、目の前で今何が行われているのかは理解でき、故人のご冥福を祈る気持ちも深まるのではないかと思います。
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